*** 注意! 以下には本誌連載分のネタバレがあります ***
今回のお題は、ネギま!に登場する格闘技、「合気柔術」と「八極拳」についての検証です。
*エヴァと合気柔術
*エヴァは合気の達人なのに、どうしてコケるのか?
*八極拳金剛八式「降龍」「伏虎」の謎
以上の三本立てでお送りいたします。
■ エヴァと合気柔術
(107話)
今回登場していただくのは、合気柔術を百年かけて完成させたという「不死の魔法使い」エヴァンジェリン師匠です。
例によって前史年表にも書き加えてあることですが、2003年の百年程前、というと1903年前後、ということになります。
ではその頃、合気柔術にどんな流派があったかというと、合気の元祖である大東流合気柔術の武田惣角が技を伝授しはじめたのが1898年からだったりしますから、当時で合気を教えていた人物といえば、大東流の惣角しかいなかったと考えていいくらいです(参考)。例えば合気道開祖である植芝盛平が合気を教えはじめたのは1922年から、つまり80年程前という計算になります(参考)。
惣角は1903年当時で46歳、身長も150cm未満だったそうですから、「チンチクリンのおっさん」と言われればそのまんまですね。(ちなみにエヴァは身長130cm。)
ところで、柔術の修業で「気」の力は身に付かないものなんでしょうか? 刹那によると、エヴァは「気」を使わずに戦っているみたいですが……。
ひょっとすると「吸血鬼は気の力を使えない」という裏設定があるのかもしれません。まぁ、「吸血鬼=死者」、「気=生命エネルギー」なんですしね。
(「一撃!! 一撃でダウン」103話)
それにしても、「魔力も気もなく」「パワーもスピードも常人のそれ」なエヴァにパンチ一撃でKOさせられた山下慶一って、一体……。投げ技やカウンター技ならまだしも!
(常人並とは言っても、修業前のネギと同じで「子供の体格で大人並みのパワー」ということだと思いますが。いや、それにしたって。なんか凄い急所を突いたとか?)
(5巻43話)(11巻90話)
あと合気といえばいいんちょですが、現代の合気柔術は分派が激しいので、特にエヴァとの関連性とかは無さそうです。普通に武術の教師を雇って教わったんじゃないでしょうか。
■
(「魔力があれば周囲3km三百体の人形を操れる」107話)
合気とは関係ない話もついでに。エヴァが使う「人形使いの技能」の元ネタは、『TRIGUN
MAXIMUM』の「レオノフ・ザ・パペットマスター」でしょう。こっちも「広範囲の人形を数百体同時に操れる」というまんまの設定です。(ちなみにレオノフが出てくるのは2巻と3巻。)
エヴァの「人形使い(ドールマスター)」という設定から、「繰り糸」は武器として出てくるだろーなと前から予想してましたので、これは期待通りの展開でした。でもトライガンで来るとは思ってなかった(笑)。
■ エヴァは合気の達人なのに、どうしてコケるのか?
(「へぶぅ!?」107話)
ところで、百年も体術の修業を積んでいるわりには、エヴァちんはかなりのドジです。合気の達人ともなれば、普段の歩き方や身のこなし方自体が達人クラスであるべきだと思うのですが……。
ちょっと謎です。
しかしこの「びたーん」と音を立ててバンザイしながらズッコケるエヴァ、という図は一種のお約束ギャグにもなっていますので、3巻の時のズッコケを回想して見比べてみましょう。
(「へぶぅっ」23話)
こちらもなんとも見事なコケっぷりです。ちなみに話数は84話も前ですが、時系列的には二ヶ月そこらしか経っておりません。
これらのシーンで注目すべきは、すっころんだ後の台詞も一致しているという点ですね。
(107話)(23話)
エヴァ「うぐぐぐっ これだから 人間の体はっ‥」
エヴァ「うぐぐ 空も飛べぬとは 人間とは何て 不便なんだ」
この台詞から察するに、エヴァは15年間も人間として生活しているにもかかわらず、時々「自分は飛行能力を持っているのだ」と勘違いしてしまうことがあるようです。
いくら身のこなしが達人クラスといっても、「飛行できないのに飛べるつもりで足を踏み出したら」ズッコケるのも当たり前。
(再び107話)
この時も多分、(足で階段を登らずに)舞台の上まで一気に飛行して移動する気マンマンだったんじゃないでしょうか。しかも目をつぶって。
んで「うぐぐぐっ これだから(空も飛べぬ)人間の体はっ‥」の台詞に繋がる、と……。
(再び23話)
案の定というか、23話の時も目をつぶりながら飛ぼうとしてんですよこの人。
100年で合気をマスターすることはできても、15年やそこらでは吸血鬼だった頃のクセは抜けないということなんでしょうか?(そりゃあ、数百年の人生のうちの15年じゃあムリも無いかも。)
ですので、エヴァちんがコケてしまった時は、
⊂⊃ ⊂⊃
⊂ \ /⊃
\\/⌒ヽ//
⊂⊃ (( \( ^ω^) ))
/| ヘ 空も飛べるはず
//( ヽノ \\
⊂/ ノ>ノ \⊃
レレ スイスーイ ⊂⊃
彡
\____________________/
(⌒)
 ̄
O
。
/⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
| / ブーン
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\ \
\ /⌒ヽ \
と⌒⌒つ;^ω^)つビターン
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こんな気分なんだろうなと思います。
■ 八極拳金剛八式「降龍」「伏虎」の謎
96話でネギが使用した「八極拳 金剛八式 翻身○○」という技は、本誌連載と単行本で表記が異なっています。単行本で修正されているということは、本誌では用語のミスがあったということでしょう。
(本誌96話)
(11巻96話) 金剛八式は「金剛八勢」ともいって、八極拳の三百年近い歴史の中でも比較的最近(李書文の八極拳以降)に考案されたもののようです。
文字通り八種類の基本技の総称であり、伝えられる系統によって微妙に各技の名称が異なるのですが、技の内容は大体同じだと思われます。
少々書物やインターネットで調べてみると、以下のようなバリエーションが確認できました。
\ |
長春系 |
東北系(霍氏八極) |
天津系(河北省国術館系) |
一. |
冲捶 |
沖錘(冲捶に同じ) |
冲拳(冲捶に同じ) |
二. |
川掌 |
迎面掌(川掌に同じ) |
降龍 |
三. |
降龍 |
降龍 |
鶴歩推山(川掌に同じ) |
四. |
伏虎 |
伏虎 |
探馬掌 |
五. |
劈山掌_ |
劈山斧(劈山掌に同じ) |
劈山掌 |
六. |
圏抱掌_ |
登山探馬掌(探馬掌に同じ) |
熊蹲(圏抱掌に同じ) |
七. |
虎抱 |
熊蹲圈抱(圏抱掌に同じ) |
伏虎 |
八. |
探馬掌 |
虎扣拿(虎抱に同じ) |
虎抱 |
この内、長春系の金剛八式は『八極拳―中国伝統拳の精髄』という本の中で写真を見ることができます。(いずみのは、この長春系の実技を見学させてもらった経験もあります。)
そこで、結局「降龍」と「伏虎」のどちらが正しいの? という話になりますが、これは「伏虎」で問題ないですね。
「降龍」は拳を下から上に突き上げる技、「伏虎」は掌(というか腕全体)を上から下に叩き付ける技なので。それぞれ「空の龍を打ち降ろす」「地面に虎を押し伏せる」という意味の技名になるようです。
ネギの攻撃は一見手刀に見えなくもないですが、実際は掌打であることがわかります。また、指先を伸ばさずに軽く折り曲げていれば「探馬掌」っぽく見えたかもしれません
ね。
まぁ、空中で一回転(翻身)してる時点で、正確な金剛八式でもなんでもないのですが……そこはマンガですな。
ちなみに伏虎はGoogleで「金剛八式のひとつ伏虎」って検索したら写真を見ることができますよ。まぁ、バーチャでアキラを使っても見れるんですけど
。
■
ついでにもっと細かい話をすると、古菲がネギに教えた八極拳は、いろんな系統の技がかなりごっちゃになっています。(例えば、「活歩」と「金剛八式」は別々の系統に伝えられている技ですし、八大招式に「通天炮」を含むのも系統が別になると思います。)
これは、古菲に八極拳を教えた師匠が元々「系統がごっちゃになった八極拳の使い手」だったのか、古菲自身が複数の系統の使い手達から技を教わりまくったかのどちらかなんでしょう。
古菲は
自分の八極拳を「ミーハーでちょっとネ」とか言っているあたり、複数の使い手からかじった説の可能性が高そうですね。
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