*** 注意! 以下には本誌連載分のネタバレがあります ***
企画:Taichiro
原案:Taichiro/いずみの
文:Taichiro/いずみの
監修・資料提供:いずみの/
赤松健論
前回、赤松健論のいずみのさんと共同で書いた「ネギま!が2倍おもしろくなる、ネギま!93話のポイント」が非常に好評だったため、今回からは正式に連携体制で記事を作成することに決定いたしました。(詳細はねぎま*のいま参照)
新体制での第一回は、94話の見所特集。ネギま!は流して読んでも楽しめるような作りになっているのですが、実は布石や伏線がいたる所に散りばめられた重厚な作品でもあります。
今回はそんな視点で、ネギま!の一歩踏み込んだ楽しみ方を紹介していきたいと思います。
というわけで、今回もページの順に追っていきましょう。
■ 先ずは1Pめの下段。
小太郎と愛衣がいい雰囲気ですね。夏美が「ん? 何アレ」と気にする様がおもしろい。しかしここでの一番のポイントは、「ホホホ」と余裕の笑顔を返す千鶴だったりします。
小太郎は自分の弱点をなかなか認めたがらないカッコつけキャラ。上でのセリフも何気にカッコつけっぽいですねw 普段千鶴や夏美には頭が上がらないであろうことを想像すると、この微妙に偉そうな態度も微笑ましく見えてきます。
ところで現時点での小太郎の一番の弱点は何でしょう? そう、ここで思い出されるのが千鶴。数少ない弱点である千鶴の反応が、このシーンでの見所になってくるわけです。
それではここで、千鶴と夏美の反応を比べてみましょう。
夏美の場合、「弟の小太郎君」が知らない女と仲良くしているためか「ん? 何アレ」と気にしています。会話の内容は聞き取れないはずなので、これは見つめ合う二人の雰囲気を怪しいと思ったのでしょう。
それに対する千鶴の反応は「ホホホ」と余裕の笑顔。
(64話より)
(87話より)
ここで確認しておきたいのは、小太郎が「女を傷つけないという主義に反して千鶴に傷つけた」ことがひっかかりとなって千鶴に惚れているらしいという点です。(ネギと協力し、ヘルマンに捕まった千鶴を助けに行ったことからも、彼女を傷つけたことが小太郎にとって大きな意味を持っていることがわかります。)
つまりこのシーンの見所は、愛衣→コタでも夏美→コタでもなく、「愛衣と仲良くしてるのに千鶴に何とも思われてない小太郎」なのですw
そうすると、夏美の反応は、弟扱いしている夏美ですら気にするのに千鶴は一切気にしないという対比を描くための演出、だと考えることができます。千鶴にツンデレwしてる小太郎ですが、当分お世話しなきゃならない悪ガキの地位を返上することはかなわなそうですw
■ 2Pめは古菲とネギの修行の様子を描いた扉絵。ここでのポイントは、扉絵に「過去に巻き戻された情景」を挿入することによって、ネギと古菲が共に修業してきた時間の経過を表現しているということです。
7巻(修業編)の舞台となった世界樹前広場に、その時のメイン登場人物である古菲、まき絵、明日菜、刹那、茶々丸、チャチャゼロ、の配置。明日菜のハリセン、刹那が剣を持っているのは二人の修行も髣髴とさせますし、まき絵に至っては、当時の衣装そのままです。更に、一応は敵だった筈の茶々丸がこの輪の中に混じっていることを考えると、これは弟子入りテスト直後の時期を描いているのでしょう。
この情景を挟むことで、二人が過ごしてきた時間の積み重ねを読者に想像させているわけです。この扉絵はそのまま本編の展開に向けた布石にもなっているんですが、それについては後述します。
ちなみにこの二人が取っているポーズは「走圏」という八卦掌の基礎訓練法です。茶々丸戦までのネギは八極拳「だけ」を学んでいたことから、エヴァの弟子入り後から八卦掌も併習するようになったんだなということがこれで(わかる人には)分かるようになります。
■ 3Pの見所はまず、フードの男の名前判明でしょう。答えは「クウネル・サンダース」。以前ここでも名前予想をしましたが、サンダースというのは完全に想定外でしたww 赤松の野郎〜w やりおります。にしてもこれ予想できた人っているんでしょうか??
朝倉も「ふざけた名前だ」と突っ込んでいますが、これは偽名っぽいですね。そういう点ではフード=クウネル・サンダースも納得いきます。
というわけで、消去法で考えると、高音=お姉様は確定ですね。初戦突破が危ぶまれていた高音とエヴァにも光が見えてきましたw
(ポチこと西本英夫)
ポチの素晴らしい負けっぷりもポイントですw M属性であるポチをしっかりいじめる辺り、先生も「わかってる」感じですね。このシーンは赤松先生の遊び好きな側面が強く出ていると思います。意外と、こういう「お遊び」はノリノリでやるタイプですのでw
余談ですが、赤松先生は講談社で西本英夫先生と会うと、よく漫才とかして遊んでいたらしいです。今回は、気の知れた者同士のコラボってとこでしょうか。
最後にフードの男がネギをじっと見つめる描写も外せません。これは、これまで張っていた伏線の再確認ですね。この後2人に何かがあるのは確実でしょう。
ネギはフードを下ろした状態なので気付きにくいですが、同じ魔法使いの格好をしているという共通点も忘れてはいけません。「似たようなカッコ」「魔法使いの仮装」とわざわざ説明しているのもポイントです。これによって、フードの男が魔法界の人間ではないか、という説明も兼ねているわけです。
■ ここでトーナメント表の再確認。前回の予想では、フードvsエヴァ、フードvs(明日菜or刹那)、フードvsネギと戦うことで、より盛り上がりの多いトーナメント表になるということを指摘しました。
この予想は残念ながら外れてしまったわけですが、よく見直してみると、今回明らかになったサンダース=フードでも結構面白いトーナメントが実現されています。やはり、抜け目なく考えられたトーナメント表であったのでしょう。
(5/14追記 : 余談ですが、トーナメント表については、赤松氏が日記で「サイコロを振って決めたもの」と発言していますw それだと「単なるランダムな結果に従っているだけなの?」って感じですが、行間を深読みすればそうとも限らないような気も……? これに関してはいずみのさんが特集しているので、興味がありましたら併せてどうぞ。
伏線を張りまくっている怪しさ爆発のフードが決勝戦まで勝ち抜こうとした場合、フードvs小太郎、フードvs(楓or龍宮or古菲)、フードvsネギ?という順番で闘うことになります。これらは全て「読者が実力を良く知っている」キャラ達との対戦カードですから、 「強さの比較表現」もわかりやすく行えるようになっています。これはこれで盛り上がりに期待できそうです。
また、特に注目したいのが、小太郎と楓の力関係。この二人が直接対決する可能性は薄まってきましたが、「本気の小太郎がフードに惨敗」「楓がフードと接戦」という結果の違いさえ描ききれば、その実力差の開きは充分表現できることになります。
これはむしろ小太郎自身にとっては、「自分の力不足」を心から実感しやすいシチュエーションだと言えるでしょう。小太郎は女性である楓に本気を出せないため、楓と直接戦って負けても言い訳が効いてしまうからです。
小太郎はヘルマン編の直後から、ファンの間で「忍者として楓に弟子入りするんじゃないか?」という期待の目で見られているキャラなので、フードとのカードはその点でも要注目でしょう。仮に小太郎が楓に弟子入りしたとすれば、その彼が「エヴァに弟子入りしているネギ」と並ぶことで、ようやくこの二人のライバルは同じラインに立てるのだ、とも言えるかもしれません。
(ヘルマン戦を並んで見守るエヴァと楓。71話より)
■ 4Pはまず、前回張っていた技名叫びの回収ですね。楓がスーツを着て軽々と闘っているのもポイント。これは余裕の現れの表現でしょう。楓もまだまだ真の実力を見せてくれません。
(93話より)
(「どんなイカサマショーになるやら ケッ」93話より)
そして出ました今回のおどろき役千雨! 「遠当て」レベルでこのリアクションですから、バトルがもっと魔法染みてきた時にどう自分を納得させるのかも見所です。やはり千雨からは目が離せません。
■ 5Pで楓が使ったのは92話で説明された瞬動術(足の裏に気を集中させることにより高速で移動する技)の進化形?である縮地法。
(92話より)
小太郎の動きと見比べるとその洗練度が段違いであることが良く解ります。達人の戦いには必須とのことで、早速使われました。
その洗煉された縮地の凄さを『あれが「縮地」のほぼ完成形ですね 「入り」と「抜き」に気配がなかったでしょう』と解説する刹那先生ですが、ここで面白いのは、神鳴流の剣士である刹那が縮地を説明する時に、(スポーツ用語でいう)「初動と終動のモーション」のことを「入りと抜き」と呼んでいる点です。
これは、漫画を描いた経験のある人間なら、ちょっと笑えてしまう小ネタ。いわゆる書道における筆運びの「始筆」と「終筆」のことを、漫画業界用語では「入り」と「抜き」と言うのですが、それにひっかけたネギま!独特の表現なのでしょう。いかにも「漫画スタジオ発祥の世界観」みたいなテイストが出ていてユニークです。
■ 6Pは古菲と龍宮の登場シーンから。
(86話より)
ネギが二人を「古老師」「龍宮隊長」と呼んでいます。また、真名の「隊長はやめよう」発言でさらにダメ押し。
これは86話の龍宮の回で用いた小ネタをうまく拾って、両者とも目上の立場の人間であることを、改めて確認させている演出です。
また、古菲の「真名は本物の戦場をくぐり抜けてきてる」発言から、86話での龍宮の話は少なくともこのラインまでは真実だということが確定しました。恐るべし真名。
最後に、小太郎の「けどホラ たつみー姉ちゃん銃使いやし」発言でライトな読者のために真名が銃使いであるということを復習しています。これは銃無しでも強いという真名の強さの再確認と、真名が「あくまで飛び道具にこだわる」キャラであるという理由付けにもなっています。
■ 飛んで10P。ここの見所は解説者席ですねw
意図的にツッコミの千雨を置くことにより、「スポーツ漫画の解説者席」をパロディネタとして昇華しています。
(80話より)
80話の最後で超一味として登場して以来、扉絵以外ではずっと登場シーンのなかった茶々丸にもやっと出番が与えられました。どんな役かと思えばアナウンサーw でも武術の使い手ってことでバトルの解説は意外な適役だったのかもしれません。
ちなみにこの時間の各クラスメイトは、
選手出場/観客(12):明日菜、刹那、古菲、楓、真名 / 千雨、木乃香、のどか、夕映、ハルナ、千鶴、夏美
開催サイド(3):超、朝倉、茶々丸
クラス企画(10):いいんちょ、チア×3、運動部×4、双子
謎(6):さよ、葉加瀬、五月、美空、ザジ、エヴァ
(84話より)
朝倉のステルス情報アンテナさよは一体どう動くのか、未だ姿を現さないエヴァはどこで何をやっているのか、葉加瀬は何を企んでいるのか、そして、美空はホントに魔法生徒として活躍できるのか!?w 余談ですが、五月は観客相手に露店で荒稼ぎしてる可能性もありますねw
それにしても、クラスメイトの立ち位置の割り振りがもはや職人芸。五月とザジ以外はキレイに適役が割り振られていますよ。これは各キャラクターに、その役割と矛盾しない行動をちゃんと取らせているってことになります。
■ ところでここで、豪徳寺が解説している「羅漢銭」についてのウンチクを少し。羅漢銭は実在する武器術の名前で、本物の硬貨をそのまま投げるだけでなく、フチを鋭く削って刃にしてから投げることもあります。別名は「金銭鏢」。
本来は手首のスナップを効かせて投げるので、真名の投擲法(魔力?でコーティングしてから親指ではじく)は羅漢銭とは異なる技です。豪徳寺が自分の知っている範囲の言葉で喩えてみただけなのでしょう。
実在する技とは言っても、ネギまの場合はほとんど『拳児』(少年サンデー連載作品)からの引用だと言えます。『拳児』とは、当時マイナーだった中国武術の知識を日本に知らしめた格闘漫画の名作。ネギが使う「八極拳」と「八卦掌」も、この漫画の影響で一躍メジャーになったようなものだったりします。
『拳児』に書かれている知識をそのまま鵜呑みにして引用する作品というものは山ほどありw、ネギまもその中のひとつ……と、いうよりも、「日本の漫画家は『拳児』の影響を受けまくっている」という状況自体をパロディ化した業界ギャグだとも言えるでしょう。
これが『拳児』における羅漢銭の解説シーン。ここでリンゴに刺さっているのは100円玉で、真名の500円玉よりは経済的ですw
この通り、豪徳寺の解説は『拳児』とまるっきり同じ。
これはネギま!が『拳児』を引用しているというより、「豪徳寺は『拳児』の愛読者」「実は漫画で得た知識を披露しているだけ」という高度なネタとして読めなくもありません。そう考えると、妙に豪徳寺が親しみやすい兄ちゃんに思えてくるから不思議です。
■ だいぶ長くなりましたが、最後に13Pのネギの回想シーン。
扉絵を持ってくることによる修行の回想。そして接近戦への言及。「2か月ずっと修行を受けてきた」は、最後の古菲復活シーンにも繋がってくるのでしょう。
■ ところで、今回の古菲の戦い方は少し視点を変えると途端にアツいものとして映ってきます。
本来なら古菲は「八卦掌」と「形意拳」を得意としており、八極拳は(ネギに教えられる程度の実力はあっても)補助程度だった筈です。でも今回に限ってはなぜか、八極拳しか使っていません。
これは、ネギに対して「真剣勝負での戦い方」を見せてやりたい師匠心から、あえてネギと同じスタイル(八極拳+八卦掌)を選択していたのかもしれないのです。
こうして読むと、今回の古老師が段違いにアツく見えますw 格上の相手に、得意な形意拳を封印しているわけですからね。
■ 最後に今後の古菲×真名戦の展望ですが、次の対戦相手は楓ということもあり、この試合はどっちが勝ってもストーリーに影響がないと言えます。
これはつまり、古菲、真名のどっちが勝ってもおかしくない、純粋に「どっちが勝つか」だけに集中できる珍しいカードだと考えることができます。
そう、こればっかりはストーリーを読むことによる展開の予測は不可。次週決着がつくまで誰にもわかりません。
次週はページをめくりながら、一体どっちが勝つのかハラハラさせてくれることでしょう。来週が今から待ち遠しい!
■ 今回触れなかった、94話とは直接関係のない今後の注目点のまとめ:
・ 負傷した選手はそのまま次の試合に進むのか?
・ 休憩時間は殆ど無いと思われる。リザーバー出場の可能性は?
・ ここで木乃香のアーティファクトの出番(解説)のチャンスなのでは?
というか、格闘大会はいつ終わるのか? 一試合15分、休憩時間も15分だとして単純計算すると昼過ぎには終わる計算になるが……。
・ この後に控えているイベントは「さんぽ部の学内一周イベント」「夏美の演劇」「ザジのサーカス」の三つだけ。さんぽ部の楓と双子が大会終了まで時間を潰していることを考えると、学内一周イベントは格闘大会の終了後、ということで確定か? 学内一周と演劇はバッティングしないのだろうか。二日目はタイムマシンを使わずに済むスケジュールなのか?
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